深夜零時のチル食堂 

(著者)佐竹扇壽

 時計を確認してラヂオの周波数をあわせる。
 今のわたしの楽しみ。それは…。

 深夜零時の時報と共に、初老男性の落ち着いた声がスピーカーから流れてきた。

            **
 深夜零時のチル食堂。
 タイムテーブルにものらない、秘密のラヂオ食堂。
 気づいた方は、ちょっと幸せ。
 聞いていただければ、コウフクいっぱいユメいっぱい。

 今宵も正味三分、目を閉じて令和にレトロにお付き合いいただければ幸いです。
 さて、本日のメニューは…。

 ――
 琥珀色のスープ。昔ながらのチャーシューメンマにネギ、なると。丼ぶり淵には 海苔二枚。
 まず、レンゲで盛付を崩さないように熱々スープをひとすすり。

 煮干しのニオイとかえしの塩味。それをまろやか、脂の旨味が全てを包み込む。
 あったかスープが食道から胃に。
 鼻腔と口内にはスープの余韻。

 次に盛付を崩し、麺へ。
 ーこの時、チャーシューと海苔はスープに浸しておくー

 ズルズルズルゥ~~。
 ハフハフ、ハ~。
 スープをまとった、熱々極細ちぢれ麺。噛むごとに小麦の風味。
 ここでまだ麺が口にいるタイミングで、チャーシューにかぶりついては、レンゲでスープも流し込む。
 口の中は、麺、麺、チャーシュー。
 それをスープでコーティング。

 次にお冷を一口含んで、湯気がほんわか白メシへ。
 先にスープで浸した海苔を白メシにのせてかっ込む。
 磯の香りの隙間から、スープの旨味がジワジワジワ~。

 これだけで白メシのおかずに。
 さらにここでもチャーシューにかぶりついては、スープをすする。
 同じ炭水化物でも麺とは違った幸せが口内に広がる。

 この後は、麺、麺、スープ、スープ。お冷を挟んで白メシ、チャーシュー、メン マになると。
 そして…。
 満腹感と満足感を大いに感じて『ごちそうさまでした』。

 ――
 みなさん、今宵のメニューは、もうお分かりラーメンライス。
 設定は、私のふるさと、新潟あっさり醤油のお店。
 ラーメンどんぶりの脇には、新潟特産、プックリふっくらコシヒカリ。
 先日、新潟市のラーメン外食消費額が、全国一位というニュースを耳にし、喜びの気持ちで選ばせていただきました。
 リスナーの中には、新潟でラーメン?とお思いになる方もいらっしゃると思います。が、そんな方ほど是非一度新潟ラーメンをご賞味ください。
 本日の新潟あっさり醤油の他に、濃厚味噌や長岡生姜醤油などの新潟五大ラーメン。
 この他、様々なバリエーションも多数。
 どれも味はもちろん、そのレベルの高さにきっと驚嘆されること間違いありません。

 深夜零時、口福を届けるチル食堂。そろそろお時間のようです。また次回の放送をご期待ください。

 ザァァァァァ~
            **

 ラヂオが終わると、口の中は口福で潤っていた。それをゴクリと飲み込み、この時間帯にラーメンライスを食したい願望(ユメ)と対峙するわたしがいた。
語るだけ語って、サッパリ終わるイケズなラヂオ。でも、そんなチル食堂が今のわたしの小さな楽しみ。
 ー今週末は新潟に行ってみようかな。―