会えますチケット

(著者)せとやまゆう

 夕方の長岡駅。レストランフロアから、いい香りが漂ってくる。和食、洋食、中華・・・。何でも揃っている。改札の前では、たくさんの人が行き交う。若いカップルは、立ち止まったまま見つめ合っている。なかなか、つないだ手を離せない。そこへ、タキシード姿の男が声をかけた。
「どうぞ、これをお使いください」
「何ですか?それは」
「特別なチケット、二人分です。枕元に置いて寝れば、夢の中で会えますよ」
「でも、高いのでしょう?」
「いいえ、無料で差しあげます。その代わり、感想を聞かせてください。明日も、ここに来ますから」

 タキシード男はチケットを渡すと、足早に消えていった。その夜、二人はそれを使ってみた。すると、本当に夢の中で会えるのだった。しかし、会話することもなく、同じ空間に存在しているだけだった。

 次の日、若い男は言った。
「夢で会えたけど、全く楽しくなかったです。話すことさえ、できなかった」
「それなら、このチケットはいかがでしょう。夢の中でも、思い通りに行動できますよ。ただし、これは有料となりますが・・・」