桜並木の情景に想いを馳せる

(著者)上野 龍一

 鳥屋野潟の桜並木。
 通勤の車内、コンビニで買ったコーヒーを飲みながら少し想いに浸る。
 そんな何気ない朝のひと時が私の一番お気に入りの時間である。

 春は頭上を覆うように咲き乱れた桜のトンネルを潜るだけで心が弾む。
 夏は緑の葉と葉が混じり合い、そこから漏れる木漏れ日はキラキラと輝きながら降り注ぎ、秋は桜紅葉の色合いが、まるで水彩絵の具を混ぜたような、茜色を紡ぎ出す。
 冬は枝に積もった雪が白い花を咲かせ、花弁のように風に乗って舞う雪は寒さで凍てつく心を少し和らげる。

「桜の下には死体が埋まっている」
 という都市伝説が時折語られることもあるが、桜が短く咲き誇り、散っていく美しさと儚さからくる話なのかもしれない。
 四季折々美しい情景を見せ、生き生きとした生命を感じさせる桜に人は自然と「死」という神秘を重ねてしまうのであろう。

 桜の下に死体など埋まってはいない。
 なぜなら私が死体を埋めたのは、
 あのクスノキの下なのだから。