二年後に気づく

(著者)せとやまゆう

 急に、男は気づいた。その女のことが好きだと・・・。まるで魔法にかかったかのような、不思議な感覚。彼女とは、会えなくなって二年たつ。以前勤めていた、会社の同僚だった。たまたま、同じタイミングで転職。それぞれ、違う町に移住し、再出発した。別に、仲が良かったわけではない。言葉を交わすことはあまりなかったし、連絡先も知らなかった。しかし、男にとっては気になる存在。まず、気持ちの良いあいさつをする人だった。そして、どんなに仕事が忙しくても、笑顔を絶やさない姿。とても輝いて見えた。

 それにしても、なぜ今なのだろう。離れたからこそ、気づく恋心。それなら、会えなくなってすぐのタイミングでも、いいはずだが・・・。これまで、新しい環境に慣れるのに精一杯だったのかもしれない。あるいは、二年という時間のなかで、脳が彼女のイメージを美化し続けていたのかもしれない。まあ、一時的なものだろう。そう思って、男はあまり気にしなかった。

 しかし、気持ちが消えることはなかった。一週間たっても、一ヵ月たっても、三ヵ月たっても・・・。むしろ、気持ちは高まるばかり。連絡先を知らないから、連絡をとることができない。住んでいる町の名は聞いていたが、土地勘がない。そもそも、探して訪ねて行ったところで、迷惑がられるだけだろう。どうすることもできない。彼女とつながる手段が、一つもないのだ。
「俺のことなんて、どうせ覚えていないだろうな。興味なさそうだったし」
 恋人がいて、楽しく過ごしていることだろう。
「俺も彼女つくるか。まず、好きな人を見つけないと・・・」
 
 ちょうど、その頃。その女が乗った電車が、越後湯沢駅に到着した。唎き酒マシーンの前には、今日もたくさんの人が集まっている。